NAIST-BIO 修了 20周年記念イベント
奈良先端大バイオ20周年合同同窓会へむけて、
第六−九期修了生の皆さんに
元バイオサイエンス研究科長 磯貝 彰
2023年5月5日
奈良先端大バイオ20周年合同同窓会へむけて、第六−九期修了生の皆さんに
元バイオサイエンス研究科長 磯貝 彰
昨年秋、奈良先端科学技術大学院大学の創立30周年の記念式典が奈良で開催された。式典の中で、もうあれから30年経つのだという思いが強かった。
私が学長職を務めていた時に開催された、バイオサイエンス研究科創立20周年記念同窓会の席で挨拶を要請された私は、元研究科長という立場で、当日出席していた多くの第一期生に修了20周年の同窓会を開催することを頼んだ。そして、出来れば、それを毎年次の学年に引き継いで、続けて行って欲しいと皆さんにお願いした。
そして、2015年12月5日に京都で第一期生の修了20周年同窓会が開催された。当日は、修了生、教員、職員ら100名もの人が集まってくれた。もちろん、その中心は修了生であった。第一期生には、大学を自分たちで初めから作ったという思いがあり、彼等にとっても記念すべき会であったと同時に、それぞれの研究室がまだ十分には独立しておらず,学生同士の横の繋がりがとても強かったということがあったのであろう。
その会には同窓会を引き継ぐべき第二期生の幹事が同席し、翌年の第二期生の同窓会への準備が始まった。そうした修了生の努力が毎年引き継がれ、第五期生の同窓会まで順調に開催されてきた。ただ、第一回の同窓会の時に比べ、熱気がやや薄れ、参加者が少なくなってきたことは少し残念ではあった。しかしそうであっても,後に述べるその意義が薄れることはなかった。
その後、2020年の第六期生の時に、いろいろな準備が進められる中で、コロナ問題が発生し同窓会を開催することが出来なくなった。その状態が数年続き、今年ようやく、コロナ問題も収まりつつあるなかで、第六期生から第九期生までの合同同窓会を開催する準備が進められている。言い出しっぺの私としては、修了生の皆さんが、こうした集まりを継続してくれていることをとてもありがたく嬉しく思っている。
ここに、あらためて、私が当初考えていた事を書いておこう。
修士課程修了時、皆さんは20代なかばの年齢であった。そして20年たった今、40代の半ばということになる。この年齢は丁度人生の中間にあたる年齢である。同窓会は単に集まって食事をし、酒を飲み,昔を懐かしむためのものではない。人生を振り返って懐かしむには、皆さんはまだ若すぎる。目的の一つは、こうした機会に、2年間、あるいはそれ以上の時間を、あのある意味閉ざされた空間で、濃密な時間を共に過ごした仲間達に再会し、当時の自らの思いやいろいろな経験を思い出し、これまでの自らの生きてきた道筋を見つめ直すことであろう。しかし、さらなる目的は、仲間との話のなかから、皆さんの人生のこれからの後半部分をどう生きるかを考える、また、それに向けてどう行動するかについてのヒントを得ることにある。これからの皆さんの人生は、それぞれのネットワークが重要になってくる。今がSNSの時代といっても,濃密な時間を共に過ごした仲間とのネットワークは、皆さんそれぞれにとってとても重要なものであろう。或いは、重要なものとして、活かしていって欲しいと思っている。仮想空間でのネットワークでは無く、顔の見える実体としてのネットワークが重要なのである。それぞれの皆さんが、これからの人生の後半部分を、科学者として、教員として、技術者として、また企業家として、また、さらにいえば人として,楽しく有意義に生きて行く上で参考になる話を聞ける会として、こうした同窓会を使って欲しいのだ。共にいるだけで、皆さんにあまりいろいろなことを教えることの出来なかった教師として、あの時代が皆さんにとって意義がある時間であったと思ってくれるとすれば、教師冥利に尽きることになる。
個人的な事ではあるが、私の東大農学部時代の同窓生は50人であった。現存数は減ってはきたが、卒業50年を過ぎたころでも約その半数が集まっていた。若いときから、また今でもずっと、仲間達の生き方や考え方は、いつも私の人生に影響を与えてきた。彼等には感謝しかない。
今年は4学年の合同の同窓会ということで、学年を超えた交流も出来る機会となった事から、運営に当たって、また新しい試みも出来るのであろう。そこから、何かを得て欲しいと思っている。多くの皆さんが参加し,楽しい時間を過ごすなかで、皆さんが影響し合い、また、あらたなネットワークが生まれ,それが継続し、広がっていくことを期待している。
「つくしんぼみんなどうしているのかな」。これはあるとき見ていたNHKテレビの俳句の番組で紹介された句である。私たちから見れば、成人を過ぎた学生であっても、みんなつくしんぼに見えるのだ。私たち教師は,いつも修了生の皆さんがどうしているかを気にしている。そんな皆さんの今を私たちに聞かせてもらう事も、私たちにとって、この同窓会の楽しみの一つである。
幹事の皆さんには、ご苦労様ですが、どうぞよろしくお願いします。盛会となることを祈っております。
(2023年5月5日 記す)